2004年スマトラ沖地震と大津波


最終更新 : 2005年2月

2004年12月26日(日)午前8時(日本時間26日午前10時)インドネシア西部、スマトラ島沖でマグニチュードM8.9という史上最大規模の巨大地震が発生しました。この地震により大規模な津波が発生し、インドネシアアチェ州、スリランカ、インド、タイ、マレーシアなどインド洋沿岸諸国で30万人を超える死者がでるという最悪の津波大災害となるもようです。
インドネシアのスマトラ島沖で26日、マグニチュード8.9(後から9.0に訂正)の巨大地震が発生し最大で高さ10メートル級の津波がスリランカなどインド洋沿岸の少なくとも7ヶ国を襲いかなりの死者がでたもようです。スリランカで約4500人、インドで約2000人が死亡、インドネシアではアチェ州などで2400人以上が死亡、プーケットを含むタイ南部では270人以上が死亡し行方不明者は約2800人、マレーシアでもリゾート地のペナンなどで死亡や行方不明者がでており、既に死者総数は10000人をこえインド洋沿岸全体では数百万人が避難するなどで、津波の被害としては過去100年間で最悪の規模になるもようです。
米地質調査所によると、M8.9の地震はスマトラ島西方で26日午前8時(日本時間午前10時)頃観測、震源の深さは約10キロでその後も同島北方のインド洋アンダマン諸島などを震源とするM5-7クラスの地震が続発しました。M8.9は1900年以降で5番目の強さです。最大は1960年チリ地震のM9.5です。
下の絵は共同通信社が発表した津波の到達時刻と主な被災地です。



1900年以降のマグニチュードM9.0以上の大地震
順位 年月日 場   所 マグニチュード 死者・行方不明者
1 1960年5月22日 チリ 9.5 約5700人
2 1964年3月27日 アメリカ アラスカ 9.2 131人
3 1957年3月9日 アメリカ アリューシャン列島 9.1 なし
4 1952年11月4日 ロシア カムチャッカ 9.0 多数
4 2004年12月26日 スマトラ島沖 9.0 約30万人

津波とは
津波の「津」は船の着く場所とか港を意味する言葉です。漁に出ていた漁師が沖合では津波に気がつかなかったのに港に帰って初めてその被害を知ったということで、津波という言葉が生まれたといわれています。あるいは「浜に押し寄せる波」という意見もあります。波が浜に到着する時に突然大きくなるからです。日本が地震による津波の被害を何度も経験してきたために、英語でもそのまま"Tsunami"です。
津波の起る例
海底に生じた地殻変動で海水は上下に振動しそれが大規模な波動となって地殻変動地域外に広がります。例えばよく地震の起る例として下のスケッチで左から右へ順に、右側の下にもぐりこむ地殻に対して左側の地殻が同じく下に引き込まれていきますが、ある範囲で逆に戻りの現象が起きます。これが地震で海底が上下に揺れ水が海の底から揺らされます。インドネシアは地殻の複数のプレートがぶつかる地点で火山や地震などの自然災害が頻繁に起こります。インド洋周辺国を襲った今回の津波の場合、スマトラ沖海底の9km下で地震が発生し11m隆起しながら起きたものです。


「波」と「津波」の違い、津波の速度
右下図のように普通の波は海面(海の表面)だけの揺れですが、津波は上述したように海底からの上下の揺れでおきているために、海底から海面まで全ての海水が揺れています。従ってそのエネルギは莫大なものです。
津波は長波でその波長は海の深さよりもはるかに長く、また海水は海底から水面までほとんど一様に動かされます。津波の伝わる速さは海の深さの平方根に比例します。この波は沖合いでは右上図のように波長に比べ波高が小さくそれほどめだちませんが、海岸近くの浅いところに来ると、急に波は大きくなり海岸に襲いかかるように被害を及ぼします。津波が岸に達しその波高が水深と同じくらいに波の山が崩れ土手のようになり襲ってきます。波高10mならばその波の速さは毎秒10mと言われ、物体に衝突するときの圧力は1平方メートル当たり5トンの強大さになります。津波のきやすい海岸では震度3-4のゆさゆさ長く揺れる地震を感じたら高地へ非難することが鉄則です。津波の高さは速度とは反対に、深いところでは低く浅いところでは高くなります。湾や陸地の形状や海底の地形などにより、津波の高さは急激に変化する場合があります(V字形の湾では湾の入口と奥では波高の比は1:3-4に達すると言われています)。特に湾の奥ほど津波は高くなる傾向にあり警戒が必要です。
水 深 速 度 同じ速度だと
5000m 時速800km ジェット旅客機
500m 250km 新幹線
100m 時速110km 特急電車
10m 時速36km 早い自転車
1960年5月23日日本時間午前4時10分に南米チリ沖で地震が発生したチリ地震の津波は、地震波が到達するのにホノルルまで13分52秒、東京まで20分05秒を要していますが、津波はハワイまで15時間29分、22時間30分かかって24日約18,000km離れた日本の三陸海岸に津波が押し寄せて流出家屋2830、死者139人という大きな被害を出しています。太平洋の平均水深は約4000mなので、津波は約時速800kmの速度(新幹線の約3倍の速度)で襲ってきた計算となります。ただこのように津波の到達は地震波に比べて遅くなるために津波警報がだせる可能性はあります。但し1896(明治29)年6月15日の三陸沖200kmで起った地震では約30分で津波は到達し流出家屋10617、死者27122人という甚大な被害をもたらしています。



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